〜13路盤プロペア碁トーナメント〜
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2025年1月28日(火)
13:30〜 1回戦、2回戦<棋譜配信>
16:30〜 決勝戦<大盤解説・棋譜配信>
会場:ザ ストリングス 表参道
「ゆうきゅう戦 コシノジュンコ クリスタルCUP」とは…
ゆうきゅう戦の「ゆうきゅう」は、ペア碁の発案者でもあり、囲碁普及など囲碁界に多大な貢献をされて来られた滝久雄、裕子ご夫妻のお名前に因むと共に、伝統文化である囲碁が悠久の時を超え、古から未来へと歴史が紡がれていく様にとの思いからつけられました。
また、コシノジュンコ先生が2年前から囲碁をはじめられ、囲碁入門者への門戸を大きく開いていただいたことから、「ゆうきゅう戦 コシノジュンコ クリスタルCUP」として開催する運びとなりました。
日本棋院東京本院所属
平成18年(2006年)6月24日生
東京都出身
棋士段位:三段
タイトル数:1
タイトル/称号:女流棋聖
日本棋院東京本院所属
平成11年(1999年)11月9日生
神奈川県出身
棋士段位:九段
タイトル数:11
タイトル/称号:テイケイ杯俊英
決勝に進んだのは、関・小林ペア、芝野・上野ペアでした。
※画像をクリックして拡大できます。
何が人生を成功へと導くのか。
才能、努力、コミュ力といろいろある。
だがここに一つの言葉で言い切った人物がいた、
「すべては運よ」
世界的ファッションデザイナー・コシノジュンコ。
その個性あふれる美的センスを武器に挑戦的集中でLUCKを手に入れた女帝である。
今回、その名を冠としたペア碁トーナメントが表参道で開催された。藤澤一門後援会設立一周年を記念した、「ゆうきゅう戦 コシノジュンコ クリスタルCUP」。
一回戦二回戦が終わり、勝ちあがったのは、芝野虎丸九段と上野梨紗女流棋聖、関航太郎九段と小林泉美七段のペアだ。
中でも梨紗先生は初の女流棋聖防衛を果たしたばかりの18才の令和の囲碁姫。日本初の世界女王となった姉の愛咲美先生と二人して、囲碁界に舞い降りた天才上野姉妹と言われている。
今から始まるのは決勝戦。
その前に、まずペア碁とは何かを簡単に説明しておくと、男女のペア同士が対局し、女性→男性の順でローテーションし打っていく日本で生まれた新しい囲碁の楽しみ方。
大事なルールもある。決して相談し合ってはならない。つまり、組んだパートナーの着手の意味を理解し、互いに協力しあって戦っていかなければならない紳士淑女のボードケーム。
だが、今回は、ちょっと違ったかもしれない。
「梨紗さんには、いろいろ言いたいこともありますが…」
芝野九段が試合が終わった後、口にしたコメントだ。
一体、芝野・上野妹ペアの間に何があったのか。
別室での対局の様子が、会場の大広間のスクリーンに映し出され、大盤解説が始まる。
今回も本木克弥九段に教えていただきながら観戦する
ちなみに本木先生は一回戦で、「絶対女王」藤沢里菜先生と組んだのに負けてしまった。
敗因を聞くと「相手の横塚先生が妻と打つ時は、いつもと違う力を発揮してくるんですよね」
横塚先生と里菜先生は去年結婚したばかり。(おめでとうございます!)妻には負けられないと、全力で挑んできたようだ。
「口を挟む余裕がなかった。蚊帳の外の対局でした」
ある意味、愛の力かもしれない…。
芝野・上野妹ペアが黒。関・小林ペアが白。(ここからは敬称を略させていただく)
序盤は穏やかに進行。白は厚み、黒が実利をとる。
厚みと実利。初心者にはよくわからない囲碁の言葉だ。ネットで調べると、厚みとは目先の現金より今は将来に向けて投資すること。実利とは取れる時に堅実に取って貯金を増やしていくこと、そう例えて書かれていた。わかりやすい。
そして中盤、三十七手目で黒の上野妹が二の二に打った。
「この碁のスタートはここからです。黒が白の眼を根こそぎ奪いにいきました!」と本木先生。
戦いを挑む挑戦的な手となったらしい。
けれど、「だが、これは……」と続く。「黒にとっては、失敗したら取り返しがつかない一手」
せっかくの手が、悪手なのか?
その言葉通り、白が黒の外側の薄みに逆襲。破りにいった。
何としても持ちこたえたい黒。
だが、上野妹は、ここでも勝負にでて、変化した手を打つ!
黒四十一手目の天元!
「おお!」
どよめく会場。
だが白は無視。この隙にここぞとばかりに左辺を陣地とした。
「これで先ほどの二の二の手は完全に空振りとなり、天元も役に立たず…」
本木先生が心配した通り、黒の失敗。けれど、ペアの芝野は淡々と継承し打っていく。
ここで紹介しておくが、芝野先生は史上初の十代名人、十代九段を成し遂げ、最年少で名人、王座、十段の三冠を達成。一力遼先生、許家本先生と並んで「令和の三羽烏」と呼ばれる、今最も期待されている若手棋士のお一人だ。
盤上では、ようやく黒が危機を脱して一段落。終盤に入った。
「ここからはヨセ勝負です」
白は、左右両方をシノいでいこうとする様子。対する黒は、
「芝野先生はどちらかのシノギを防ごうとしているようです。けれど、梨紗さんが!」
また何か?
「いやまだまだ!と、突っ込んでいってます!」
二人で息を合わせるのがペア碁のはずだが…。
結果は、白のシノギの不十分さをわかっていた黒が地合いに持ち込み、黒の冷静な形成判断の勝利に終わった。
中盤、終盤と攻め続けた上野妹。
それを継承、くだけて言うと、後始末しながら勝ちへと導いた芝野。
そして、勝利者インタビューであの言葉がでた。
「梨紗さんには、いろいろ言いたいこともありますが…」
令和の三羽烏をピンチに追い込んだ、恐るべし令和の囲碁姫。
フィナーレは、コシノジュンコ・ファッションショー。
コンセプトは白黒の対極。その言葉通り、ランウェイするモデルさんたちの衣装は大胆にも黒白の囲碁の模様。一瞬にして、会場は囲碁とファッションの融合の場となった。
「今は碁に夢中」と語るジュンコ先生。
女帝のインスピレーションがまたしてもLUCKを与え、作品へと昇華した。
話を戻して、今回の大会の締めとする。
帰り際、上野妹に聞いてみた。
「芝野先生、梨紗先生の攻撃的な手に困っていたかもしれないですね」
と、「あ、そうですね」とニコッと笑顔を向けると、
「コミ六目半を払う代わりに、ドンドン責めていかないと」
ペア碁といえど、我が道を行くのか。ナイスフォローの紳士である芝野先生がいたからの勝利だったかもしれない。
だが、己の棋士道を貫くその姿。
これからがますます楽しみな若き女流棋士である。
Eriko Komatsu
観戦エッセイ著者
NHK朝の連続テレビ小説「どんと晴れ」NHK大河ドラマ「天地人」「花燃ゆ」映画「利休にたずねよ」「天外者」など日本を代表する脚本家として数々の作品を発表。
映画『海難1890』では第39回日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞。
囲碁はまだ初心者だが、その面白さにハマり、脳を活性化させるためにも勉強中。
高尾 紳路 九段
木部 夏生 三段
沼舘 沙輝哉 七段
謝 依旻 七段
平田 智也 八段
飛田 早紀 二段
関 航太郎 九段
小林 泉美 七段
横塚 力 七段
上野 愛咲美 女流立葵杯
本木 克弥 九段
藤沢 里菜 女流本因坊
芝野 虎丸 九段
上野 梨紗 女流棋聖
広瀬 優一 七段
吉原 由香里 六段
※トーナメント表と各ペアの組み合わせは、1月14日にコシノジュンコ先生による抽選会で決定いたしました。
共催:一般財団法人 伝統文化棋道振興財団、藤澤一就一門後援会
特別協力:公益財団法人 日本ペア碁協会
特別協賛:株式会社 プレジィール
後援:公益財団法人 日本棋院